大学生の時、夏休みに4日間出ればよいという理由だけで、薬学部主幹の一般教養科目で、漢方についての授業に出た。
その際に、繰り返し教官が言っていたのが、
「薬も毒も元は同じ薬草。使う量によって、毒にもなりうるし、薬にもなりうる。だから、『もっと効く』と思って大量摂取してもよくなるどころか、かえって悪くなることの方が多い」
ということである。
吉本隆明も「真贋」の中で
「全てのものには利と毒がある」
と言っている。
良かれと思って、「利」を求めてやっていることが、かえって「毒」になるケースもある。
ましてや、それに気付くことなく、いつのまにか「毒にまかれている」こともあるというわけだ。
特に、先生業といわれる職種につくと、どうしても「上から目線」や「偉そう」な態度に成り代わってしまうらしい。
真面目にやる人ほど、利と合わせて、こうした「毒」も身に着けてしまうのだとも言う。
確かに、心理学の実験でも似たような結果は出ていて、
ゲームで英雄の役を任された人が、実生活でも周りの人に気遣うなどの英雄らしい行動をとるようになったり、あるいはヒーローのTシャツを着るだけで人格に影響を及ぼすこともあるという。
服装がおよぼす心理的影響は多大! 「スーパーヒーローのTシャツを着るだけで自信がアップする」ことが判明
さらに、吉本隆明は、「全てはどう付き合うか」だと言う。
利と毒いずれもあると承服した上で、清濁併せ呑むことが重要だと。